ビートたけしの面白い漫才を紹介
「きょうはおまえにケンカの仕方を教えてやろう。いいか、まず相手を見ろ。ケンカするときは相手を見て、自分より強いか弱いかをチェックする必要がある」
「だってケンカはケンカだろうが、なんで相手を見なくちゃいけないんだよォ」
「だからおまえはいつもケンカに負けてるんだ。ケンカは勝たなくちゃなんにもならないんだから、勝つための作戦がいる」
「なるほど」
「相手がどういうやつかによって、作戦もそれによって当然変わってくる」
「はー」
「いいか。まず、相手がおまえよりも強そうな場合。この場合は、ホントにケンカしたら負ける」
「負けちゃうの?」
「負けちゃう。だからケンカしないで済むように、どうしてボクらはここでケンカしなくちゃいけないのか、ということを考えさせて悩ませなくちゃいかんわけだ」
「オレはいま、どうしてここにいるのだろうか?」
「そうそう。それはアルベール・カミュの『異邦人』における’’ママンが死んだ’’ということの意味がだなあ……」
「それで相手が弱い場合は?」
「そのときはおまえ、相手がケンカする気がなくても、こっちから仕掛けてでもケンカに勝つ。これが関東軍のやり方で張作霖事件とか盧溝橋事件とかあったろう? 相手がやってなくても’’おまえやったな’’と、そういうやり方で仕掛けて行く」
「取っ組み合いになったらどうする?」
「ようし、殴り方でいま一番はやってるのを教えてやろう。いま一番強いといわれているのがフレミングの左手の法則っていうやつでな、左手をこういうふうにすると、力がこう働くときに握力がこういうふうになって、相手はここで、こう痛がるんだ」
「へーエ、たいしたもんだねー。しかし、なんでケンカしなくちゃならなかったの?」
「そりゃおまえ、太陽がまぶしかったからだ」
『ビートたけしのみんなゴミだった』171-2頁