『青空娘』(1957/増村保造)覚書2021/7/31

 Youtubeにて鑑賞。

 タイトル前の下から見上げるキャメラ、二人の背中、青空、タイトル__前半の見上げるショットの連続、これがバチバチにキマっているんだな。ピンポンのシーンなんかもの凄い、『暖流』のキャメラもかなりヌルヌル動くけどこっちはカット割りも凄い。

 後半、母を訪ねるシーンでは階段を登ってくる若尾文子を上から見下ろすショット。青空を見上げるように下からのショットの連続が、ここだけ見下ろすショットになる。

 増村らしいエネルギッシュに動くキャメラ、俳優の運動、カット割りでつなぐ。ピンポンのミヤコ蝶々……本作の肝はカット割りにこそある。キャメラと俳優の動きだけなら『暖流』のがよく動いている。しかし本作にはカット割りが、ピンポンが、テニス場での告白が、そしてここが何より素晴らしい__先生の乾杯のシーン! 青空娘のために、武士道に乾杯__ここのカット割りたるやいなや!

 映画にアクションをもたらすものは、キャメラの移動でもなければ、俳優の運動でもなく、カット割りではないか? そう考えさせる程本作のカット割りが素晴らしい。

 ヒッチコックトリュフォーでは映画の基本はカット割りであると、ゴダールモンタージュこそが映画の言語であると__本作で言うところのタイトル前の青空に叫ぶシーン、ピンポン、二人の乾杯、そしてラストのタイトル前と同じ場所で__これは音楽的規律に則ったものだ__の美しさ。そう、ラストの先生と母を見上げるショットがこれまた素晴らしい、それは写真としてではなく、映画的なリズムが乗っているからこそ美しいのだ。今の所増村ベストかもしれない(まだまだ未見が多すぎる)。