『イタリア旅行』(1953/ロベルト・ロッセリーニ)覚書2021/8/25

 ファーストショット、走る車の先頭に置いたキャメラがガーっと移動している、もうこのショットから面白い、次に左の車窓を過ぎ去る景色のショット__至福!

 二人の会話、マジでこれ『勝手にしやがれ』じゃん。後ろに男が一人の三人乗りのシーンでジャンプカットっぽいのがある。

 流石に男と女と車で一本の映画が撮れるは言い過ぎなんだけども(もう一台車を用意して前から後ろの二人を撮らないといけないし)、しかしイタリア旅行そのものが面白いんだな。映画はかつてそこにあった現実を記録する。劇映画も同じくかつてそこで演じられた現実を記録している訳だ。同じようにイタリア観光もかつてそこにあった現実である。面白い現実を作り出すのではなく、面白い現実そのものを記録するということ。

 構成も見事だ、美術館や骸骨寺、イオン現象のお楽しみまでどう持っていくか。結婚生活の破綻をきっかけとして二人をクロスカッティングで分けてしまう。と二人それぞれの旅行を描くことが可能に。

 というか室内の演出もロッセリーニめっちゃ上手いんだよな。冒頭のパーティーの目線、「楽しかっただろう?」「いいえ」とかこの辺り上手すぎる。バーグマンが窓際に立っているシーンで夫が船に乗っているショットのモンタージュも抜群にきまっているし、夫が女を帰してからホテルに帰宅した際のタロットをしまったりわざと電気を消すバーグマン、夫が用もなくもう一度バーグマンの部屋を訪れたりと演出が上手すぎるんだロッセリーニは。電気をつけるつけないをここまで面白く演出出来る監督他に居るか?

 離婚を決意した二人、予期せぬ足止め、事故が二人を再生させた。見物人の目が面白い、抱き合う二人をジロジロ見ている。そして流れる人、人、人、冒頭の車窓からの景色と同じように、人が横に流れて映画は終わる。

 クライマックスで人込みに流されるバーグマンが振り向いて手を伸ばすショトはレネが『二十四時間の情事』で模倣している(?)。

 それにしても美術館とか火山のイオン現象は映像として面白すぎるんだな、室内の演出なんかも素晴らしいし。面白い現実を面白い演出家が記録したらそりゃあもうとんでもなく面白いですよそりゃあね。