『歌麿をめぐる五人の女』(1946/溝口健二)覚書2021/9/2

 冒頭の腕試しのシーンで歌麿の手元は見えず紙に視線を送る人物(見物人)らのバストショットが続き、そして歌麿らが去り、相手だけが残り愕然と紙を見つめるショット、そしてやっと次に肝心の絵のショット! 素晴らしい、これが映画なんだな。昨日あまりにも酷い映画を観たばかりに涙が出てくる。

 『溝口健二著作集』において溝口は映画を日本の絵巻物と絡めて論じていた。例えば雲で余計な部分を隠した構図が描かれていたりと__。

 画面設計、ショットを撮れる監督というのはそういうことなんだろうな。このシーンだけでも溝口の才能を堪能できる。

 ラストの田中も良い、旦那への当てつけではなく本当の自分の恋をした彼女。自分の恋の為に二人殺すなんて滅茶苦茶なんだがこれをやてしまうんだな溝口は、田中の一人立ち歩く顔のクローズアップも良い、他はまあボチボチだけども。

 冒頭の腕試し、そうモンタージュはショットの集積物なのだ。