『ロケーション』『女咲かせます』を観て本を買った 2020-11-24

 7時 起床。朝食をとり昼に食べるおにぎりをつくる。

 9時 シネマヴェーラ渋谷へ出発。

 10時10分 到着。数分並んでチケットを購入し一旦退出して時間を潰す。

 11時 柄本明と山根貞夫のトークショー開始。『ロケーション』撮影を山根が見学した際に監督が二人居る! と驚き近づくと映画内のロケ隊だったという。これに柄本は自分らも本当のロケ隊なのか映画内のロケなのかわからなくなり、実際のロケ隊のように着替えずそのままの姿で寝て起きてまたロケ開始といった扱いをされていたらしい。それも森崎東の演出なのか? と盛り上がる場内。あっという間に終わってしまった。

 数十分の休憩を挟んで『ロケーション』上映。館内のトイレが混んでいるので一階のトイレを使おうと降りると入り口の前で柄本明を若い学生? らが取り囲み写真撮影をしていた。

 冒頭からかなりノっていたのだが、これは以前『カメ止め』を観た際と同じように笑わなければいけないという同調圧力のような空気を勝手に感じ取ってしまいラストの試写室で「わけのわからない映画」と叫ぶシーンでもう限界が来てしまった、あたかも我々はそれらを理解し笑い飛ばすことが出来るのだと宣誓するように飛び交う金切声に私はもう耳を塞いでしまいたいくらいで。

 これには根本的に笑いに対する価値観が相違しているのだから仕方ないことだ。私は基本的に笑いは暴力だと信じていて、つまりそれは反射的な笑いにすぎないのだ。もちろん落語のような笑いも大いに歓迎だが、それは大名人らの力量に依存するものであって下手な落語家ほど観客に「わかりましたか?」とすかしたギャグを何度も反復したがるものだ。理解した上で観客が笑わないことに彼らは何故気づかないのだろうか。

 ところが映画となるとどうだろう、特にカルト映画といったジャンルの映画やロマンポルノ、掘り出し物の傑作と謳われた映画に限ってある種の力学が発生してしまうのだ。笑いのコードに乗るか降りるか、そして彼らは互いの顔を見合わせた上でそれを決定するのだ。それらは明らかに連帯による馴れ合いの安心がもたらす笑いにすぎず私の求めるものとは対極に位置するのだ。

 先日国立映画アーカイブにてサイレント映画を鑑賞した時のことだ。私は伴奏のない咳と衣擦れの音が支配する空間で面白くもなんともないいつぞやのテレビで聞き流したつまらぬ芸人のギャグを思い出してしまい、噴出さぬよう自分を抑圧すればする程噴出してしまいそうになり、ついに声を漏らしてしまった。するとどうだろう、なんてことのない、文字の通り何もないシーンであるのにクスクスと笑いが伝播して行くではないか。これが強烈に面白かった、それは葬式や人に叱られている時に誰しもが経験する‘‘笑ってはいけない‘‘という意識に支配される瞬間__これこそが笑いの本質だと私は考える。

 随分と話が逸れてしまったが『ロケーション』におけるあの学校へ到着してから各々が撮影の土台を築いて行く連帯感の躍動、水着をかっぱらいトウモロコシを茹で__そして美保純が爆発するあの熱量ったらない。彼女は『気分はパラダイス』でビートたけしの横に座っているだけの名ばかり女優ではないのだ! しかし何故かノれなかった、朝なので仕方ないと割り切る。

 13時20分 外に出て適当なベンチでおにぎりを頬張る。

 13時55分 『女咲かせます』上映、冒頭で船に飛び乗りタイトルでもうバチバチにノった筈がいつの間にやら眠気に襲われもうダメになってしまった、自分でも何故だかわからない。泥棒裁きのシーケンスがあの駅までの繋ぎとしか機能していないと思われる程に私はもう萎えていた。「10分だけ待って!」から始まるベンチ越しの警官への告発「やりたくてやった訳じゃない」と叫ぶ、しかしこれまたどうもノれない。

 森崎東の権力への描写はかつてトリュフォーが『フランス映画のある種の傾向』において見事に言ってのけた「ブルジョワによってブルジョワのためにつくられた反ブルジョワ的映画」、この一文に尽きる。どうもTwitterを散見する限り映画のみならず政治に、権力に抵抗するポーズをとる連中が多すぎるように思える。それは松坂慶子がホークス的な身体性を纏ったとて隠しきれるものではないのだ。

 ラストになって気が付いたのだがスクリーンの左端が黒幕に覆われ切れてしまっている、クローズアップで進んでいくカットの頭で左端を桜の木の合わせていて、次のカットで一人一人画面左に捌けていくのだがこれでは台無しだ。少しレビューを観るとラストでアス比が変わるらしい? しかし明らかにあのショットは意図されたものであり青空娘のようなあの砂丘に登るシーンもその黒い縦線が気になって仕方がなかった、あれはどうしようもないことなのか、それとも劇場側の怠慢であるのかは疑問である。

 17時 ジュンク堂をうろつく。勢いで6600円もする『松本俊夫著作集成Ⅰ』を購入してしまった、明石海人の全集以来の高い買い物かもしれない。ついでに『ハリウッド映画史講義』の文庫を買った。

 19時30分 図書館へ行くも閉まっていた。『南の島に雪が降る』を読み終えた。

 21時 入浴と食事を済ませてゴロゴロ。

 22時 『脳ベルSHOW』を視聴。

 23時 『WBS』視聴。なんだかブログを長ったらしく書きすぎてしまった、明日は昼から国立映画アーカーイブに行かなければならないのに、さっさと寝る予定であったのに。もう少し映画のカロリーを減らしても良いかもしれない、もっと寝たほうが良い気がしないでもない。