入院生活約一か月 近況報告とか読んだ本とか諸々

  • 近況報告

 「微小変化型」の一次性ネフローゼ症候群にて一か月の入院予定であったが、尿たんぱくの数値のがあまり落ちないのでもう一か月は入院を見込んだ方が良いとのこと。

 最悪「膜性腎症」や「巣状分節性糸球体硬化症」の場合は透析が必要になることもあるらしい。とりあえず腎機能に問題は今のところ見られないが、悪くなれば血液浄化を行う可能性も無きにしも非ずと医師から説明を受けた。いずれの場合でも2年以上ステロイドや免疫抑制薬を続ける必要があることが少なくありません、との説明がされているが、そうなるといよいよめんどくさいな。退院後も定期的に通院し、薬はかかせないとのこと。仕方ないね。

一次性ネフローゼ症候群(指定難病222) – 難病情報センター

 

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 断スマホアプリ『Forest』を再開した。ニート時代にリビングで映画を観る際によく使っていたんだけど、タブレットが壊れてスマホを新しくしたタイミングであまり使わなくなってしまった。とりあえず最低の10分に設定してからスマホを投げる(物理)とかなりスマホを断つことができる。

 驚いたのがスマホ投げてノートPCのみ起動している状態は作業がはかどって仕方がないこと。というかスマホがおかしい。別にPCは起動していても読書や作業に支障をきたすことはないのに、スマホだとこれがてんでダメになる。つい先刻に確認した5chの「一人暮らし」スレや「アルバイト」スレをもう一度開いてみたりだとか、メルカリの条件検索の保存一覧をチェックしたりだとか、いいねした商品の値が下がっていないかだとか、Amazonの欲しいものリストを眺めて購入する書籍の検討をしたりだとか......すべてスマホが悪い。さっさと機内モードにして『Forest』の10分タイマーを起動し投げるべし。スマホは円盤。

 

  • 返却した図書館の本

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 『暴力批判論』は閉館時間ギリギリになって一冊枠が余ったからなんとなく借りたんだけど、普通にブックオフで100円で買って持ってた。「暴力批判論」と「翻訳者の課題」を読んだ。起床時間が6時で、8時の朝食までの間に読んでいた。中々面白かったので退院したらもう少し読み進めようと思う。

 『メカスの映画日記』はもう三回くらい借りてる。普通にこれは買ってもいい。文句なしの名著で、P39の「アクション映画擁護論」は蓮見の姿勢の先駆者と言えるだろう。メカスの文章は松本俊夫がよく引用していてそこから知った。

 P40のゴダールについての賛辞とかハワード・ホークスの擁護とかは本当に素晴らしい。これと『映像の発見ーアヴァンギャルドとドキュメンタリー』をいつか買おうと思っていたら中古の値段がかなり上がってしまった。前は2200円とかだったと思うんだけどな。『松本俊夫著作集成Ⅰ』を所有しているので多分また借りるけど。メカスはもう一回借りてから考える。

  『哲学探究』はネットサーフィンの間とか隙間時間にちょいちょい読んだ。

 『溝口健二著作集』は本当に素晴らしい、溝口がホークスの『コンドル』をベタ褒めしていたので早速アマゾンプライムのウォッチリストを消化、これがとんでもなく面白い。私的ホークスベストは『脱出』だったけれど『コンドル』に更新。ぜひ観るべき。

 別にこれは大した値段じゃない(とはいっても3000円もするが)ので買ってもいいんだけど、問題なのは図書館にまだ『溝口健二論:映画の美学と政治学』がないこと。6800円は流石に躊躇する。同じく法政大学出版の『彼自身によるロベール・ブレッソン:インタビュー1943-1983』は所蔵しているので多分待っていれば来る筈なんだけど......待てるかな? とりあえず退院後に書店で立ち読みする予定。

 三隈研次の『剣』は現在プレ値がついているので借りるしかない。二回借りたけど二回とも大して読んでいないという。最近出た三隈本の新刊のおかげで再販したりしないだろうか?

 『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』は本当に面白かった、借りた中で一番読んだ。これは読み切れるのでもう一度借りる。どちらかというとエーコ目的で借りたんだけど、カリエールの映画についての話が面白すぎる。耐久メディアとしての映画やテキストをどう保存するか、書物の価値がむしろ上がっているだとか諸々面白い。

 特に素晴らしいのがP138前後で、創作活動の発展にはある場所に仲良しグループが生まれてそこから「ビート・ジェネレーション」や「ネオレアリズモ」「ヌーヴェルヴァーグ」が誕生したけども、急に状況が変わってグループは決裂し、四散を続け、冒険はあっけなく終わってしまうとカリエール。P136でエーコがラテン文学においての同人結社について説明した後の返しで、いつの時代も繰り返すのだなと。

 そしてP140のカリエール

作家が篩にかけられるのを避けようとするなら、仲間を作り、グループに属して、孤立しないことを薦めますね。

 私もなにかしらのグループに参加しようかな。どこに? なにに? 自分で作ってしまうか? あてがないのだから。

 カリエールの面白いところはそれらの寵児らが先駆者の決定的な影響を認めていて、それをヌーヴェルヴァーグの彼らで考えるとわかりやすい(例えばヒッチコックやホークス、50年代ノワール等)んだけども、P134で

規則の適用に甘んじると、驚きも輝きもひらめきもすっかり消えうせてしまうんです。私が、しばしば若い映画作家たちに広めようとしている教訓があります。「映画を作りつづけることはできる、それはそれほど難しいことではない、しかし、そうするうちに映画の作り方を忘れてしまうかもしれない」というものですが。

 と発言している。まさに映画の歴史そのものでないか! 芸術の歴史とも言い換えられるかもしれない。日本のスタジオシステムの黄金期から、ぴあフェスティバルの時代、ロマンポルノを足掛けにしていったかつての若き映画作家たち......また借ります。

 

 

 『狂うひと:「死の棘の妻・島尾ミホ」』は入院最初の一週間で読み進めて面白いけど長いから投げた。当分後になってまた借りよう。安いから買って積むのもアリ。

 『ジョルジュ大尉の手帳』と『ソドムの百二十日』は二回借りて二回とも手つかず。

 『増補 普通の人びと』は長い(タイトルも長い)ので投げた。

 

  • 購入した本

Amazon発送の荷物なら病院に併設されているコンビニに直送できるので、ちょいちょい利用した。けど下着を母が週に一度届けに来るタイミングでメルカリ産の中古本を届けて貰ったりしているのであんまり関係ないっちゃない。Amazonのが少し早い位で。

 

 『可能なるアナキズム──マルセル・モースと贈与のモラル』

  放送大学の講義『文学批評への招待』の山田広昭担当回が群を抜いて面白かったので購入。まだ読んでない。授業のテキストそのものも超面白いのでおすすめ。講義最終回の丹治愛との対談で「友人のバイヤールが~」とか話してて笑った。

 

 

 『怠惰の美徳』

  Twitterで流れてきて面白そうだったので購入。メルカリ待ってたんだけど中々出品されなかった。これは朝食前だとかゴロっとした隙間時間にちょいちょい読んでるけど面白い。phaみたいな人種はいつの時代も居るんだなと思いつつも戦時中の苦労は今の時代にはないからそれはそれで大変だなあと。当時の帝大の文学部は200人の枠が定員割れで無試験だったとか、日本の人口がここまで増える前の時代が感じられる。

 で、当の本人も受験戦争についてはかなり懐疑的というかむしろ嫌っていて、役人根性で人を蹴落とすとは何事だ、と。捨てた猫が翌朝戻って来る話、提灯アンコウの雄の話等ほのぼのした話もいい感じ。これは編集者さんがいい仕事したね。アッパレ!

 

 『100分de名著 渋沢栄一論語と算盤』』

 『100分de名著ボーヴォワール『老い』』

  どちらもAmazonの新品でコンビニに送れたから買ったものの、まだ読んでいない。渋沢栄一の方はテレビ放送を全部観て面白かったから買った。ボーヴォワールは毎週録画しているが容量がパンクしていたらダメだこりゃ。

 

 『文庫 ある映画の物語』

  図書館で前々から取り寄せようか迷っていた奴。『アメリカの夜』のシナリオは一切読んでいないけど他の対談、随筆、そしてトリュフォーの撮影日記は中々面白い。のんびり読みます。なんか弱った時になるといつもトリュフォーに触れたくなる。初めて『大人は判ってくれない』を観た時もそうであったし、『トリュフォー、ある映画的人生』を古書ワルツで購入した時もそうだった。トリュフォーは温かい。

 

 

 『読む・打つ・書く:読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々』

  これめっちゃ面白い。Twitterで見つけた。ひたすら書評を公開することは、誰でもない自分自身の役に立つと。毎日コツコツ打つこと、書くこと。整数倍の威力。まだ読み進めて一日だけども本当に面白い、というよりその姿勢の正しさが私の背筋に波及するような感覚がなんとも心地よい。酒、煙草、ギャンブル、薬に溺れることなくみんなも毎日読んで打って書こう。足元だけを見る登山は黒沢明も推奨している。彼は脚本を便所に鉛筆と原稿用紙持って行ってまで書いていた。書くっきゃないのだ。

  まあ二人とも酒はお好きなようですけれども。

 

 『薬を食う女たち』

  メルカリにて1500円で購入。普段あまり小説を読まない、というのも小説は読むのに時間がかかるから。映画はブレッソンの言うように描写する、のではなくそこに居る、のだから僕は日常生活において映画にウェイトを置いているんだと思う。

 まだ頭の「インタビュー」しか読んでいないけれどこれは面白い。小説というか文字通り文章表現の幅広さ、自由、解放、単純な"面白さ"がそこにある。なるほど文章というのはこういう遊びというか玩具でもあるのか、と。これは明日の朝食後から昼食までの午前中に読むルーティーンになりそう。

 

 『意志と表象としての世界Ⅰ~Ⅲ』

 一冊辺り1300円で購入。時間をかけて読みます。『幸福論』も『自殺論』もそうだけどショーペンハウアー大先生は沁みるぜ。

 

 『論文の教室』

 大学の記述レポートの添削が返ってきて、論述の視線は褒められた・ないし大目に見てもらったけども全体の構成がもう一押しっぽいのでこれはイカンぞと思いメルカリで安かったから購入。あんまりこれはおすすめしない、というかなんで買ったのか謎だったんだけど先月購入した『100分de名著レイ・ブラッドベリ華氏451度』』と著者が同じだったからだ。テキストの広告がサブリミナル的に俺にこれを買わせたんだ! なんという皮肉。イデオロギー! ブックオフの百円コーナーで買った文庫本『レポートの組み立て方』を持っているのでそれで十分だったと少し後悔していると巻末の付録で紹介されていたのでまあ良しとする。巻末の付録のみを立ち読みすることを強く薦める。紹介されていた『日本語使いさばき辞典ー時に応じ場合に即し』をメルカリで買った。

 

  テキストはまぁまぁ面白いよ。プラトンの洞窟の比喩とかロウソクの灯とか。

 で、なんでこんな長文の記録をつけたかといえば勿論『読む・打つ・書く』 に強く影響された訳だが、それに上のテキストで紹介されているトマス・ジェファーソンの言葉が強く重なって、まるでモンタージュやテクストのような__スパークを感じたから消灯時間間際までカタカタやっているのです。電気が消える前に急いで引用して締めようと思います。

アイディアは個人の頭脳の中におさまっているうちは個人のものだが、いったん口外すれば万人のものとなり、だからと言ってアイディアの量が減るわけではない。それはあたかもわたしが持っているろうそくの火を他人のろうそくに移すのに、わたしの火がなくならないのと同じことである__。

NHKテキスト 100分de名著レイ・ブラッドベリ華氏451度』』P48より