『宮本武蔵』(1944/溝口健二)覚書2021/8/28

 武蔵がクソでかい一本松(杉?)の下で刀を洗うシーンと「小次郎は武蔵の鏡」というセリフ、ラストの「心の伴侶とする」ってセリフが良いくらいで他は凡。

 外でのチャンバラで武蔵を追うキャメラ、奥に歩いてくシーンもそうだけどキャメラがとにかく追って行くのがどこかヌーヴェル・ヴァーグっぽい。外ロケだし。

 しかしこれといったことがないな、クライマックスの小次郎との対決もあっさり終わってしまうし冒頭の説教が反復されるだけで(剣に邪念が云々みたいな)、巌流島を取り囲む船はちょっと豪華だけれども流石に溝口のやる気がなさすぎる。

 1944年だからやろうと思えばやれた筈で、本当に溝口は国策映画はやりたくなかったんだな。あのクソでかい大木の下で刀を洗う武蔵とバックの滝のシーンがあるのが救いで、他は本当に凡。溝口の貴重な時間をやる気のない映画に割かれたのが惜しい、それから得られるものも多少はあったろうが。